隠居の独り言 109

秋たけなわ「秋晴の候」という。スポーツの秋、食欲の秋、芸術の秋、読書の秋・・何をやっても秋の季節は一番だ。でもこれら言葉も歳を重ねると虚しい「終活の候」になる。樹木希林、アズナブール、歌丸林隆三、輪島の訃報と共に友も数人倒れ、気付けば歌の同窓会の便りも無くなっている。ボクも人のことは言えない。今は大きな病はないけれど年毎にスタミナが落ちて同年配の訃報には心落ちする。少し調子悪いとすぐに医者に診てもらい処方された薬を律儀に飲む自分がある。後期高齢者は診療代や薬価は一割負担でとても有難いが、これらが膨大な国債赤字の要因と知ると素直に喜べない。やはり病前の生活習慣が大切なのは言うまでもない。健康法オピニオンが色々あり素人は迷ってしまう。癌も早期発見、早期治療が常識だが一方で老人には放置の方が長生きする統計との説もある。食事も三食きちんと食べることの反面、一日一食が良いと実行している人もいる。老人は肉を食べよう、逆に脂肪や肉を摂っていけない。その他にも、ラジオ体操は体に悪い、ジョギングはよくない、ウオーキングはほどほどに等々・・かつて紅茶キノコが流行したけど、いつの間にか消えた。学者先生の仰せも本当のことは分からないのではないか。いずれにせよ歳を取ると体のどこか不具合になっていく。長く使っていた機械も部品が痛んでくるのは当たり前だ。老人は体の動きが何かと遅くなる。朝早く目覚めてしまう。老眼鏡が必要になる。耳が遠くなる。歯が順に抜けていく。背中が曲がる。食事量が減る。数え上げればきりがない。医療研究も進んでいるが研究者は若い人たちで、老人の痛みや苦しみは未体験なので分からないのも仕方ない。歳を取って初めて知った体験は老いなければ分からない。オリンピックや宇宙開発もいいけれど、年寄りには現実の病気や、老後の悩みの製品開発に力を注いで頂きたい。老人はいつも人生の秋で、冬のゴールが近づいている。