さるすべり

harimaya2011-08-03

「猿も木から落ちる」歌留多言葉のように
木の肌の衣を脱いですべすべと滑りやすく
これではサルも登りにくいだろうと上手い
名前を付けられた。木は、まさに夏向きで
夏の炎天下でも鮮やかな紅や白の花が咲き
涼しげな化粧で見る者の心を癒してくれる。
人間は暑さに参っているのにサルスベリ
花の時期も長く立派とした言いようがない。
暑い八月の夏は、敗戦時の寒いシベリアの痛恨を想起させる季節でもあるようだ。
原爆投下で日本の敗戦が決したとき、ソ連は一方的に日ソ中立条約を破って参戦・・
満州に攻め入って60万人にも及ぶ日本人を拉致して強制労働をさせる非道をした。
アメリカの原爆、ソ連の拉致、人道的な大きな罪をうやむやにして今も反省が無い。
あの年の夏もサルスベリは凛と咲いていた。木は正直だが人間は何と醜いものか・

隠居の独り言(967)

報道では平成22年の日本人平均寿命は男79,64歳、女86,39歳で過去最高の更新は
喜ばしいが果たして何%の人が尊厳の終末を果たせることが出来るのだろか?
大抵は病院の無機質な一室で延命治療など処置をされながら息を引き取るが
本人は疲れ切って家族が付き添っても会話を楽しむ穏やかな心も無いだろう。
昔は「畳の上で死にたい」と願ったが今はそれを叶えれば最高の終焉になる。
老世代になると誰も「健康はありがたいですね。しみじみ感じます」と言う。
歳を取れば取るほどに外見は衰えるばかりで、肌のシミ、たるみ、艶の無さ、
猫背、白髪、禿、脂肪腹、のろい動作・・また一見健康そうに見える人でも
高血圧、糖尿病、腰痛、便秘、神経痛、難聴、白内障痛風・・中高年以降
誰もどこか五体満足ではなくなっている。若い時ならすぐにも治る病気でも
治りにくくなっているのは着実に死に向っている事だが老いていく悲しみと
やがて絶えていく自らの生涯を今から肝に銘じて受け入れなければならない。
悲しいけれど病になって気付くのはひとりで歩けることは何と素晴らしいか!
自らが箸を使って食事が出来、自らがトイレで排泄できることは何と幸せか!
本来なら病気になる前に生きる今の瞬間の幸せを感じなければならないのに
不幸になって初めて幸せを知る。歩けるのは当たり前、快食・快便・快眠・・
勉強も遊びも何不自由なく送れた日々は戻らないが、若者は中年を知らないし
中年は老年を知ろうとしない。それでも不平不満一杯の若者は老いる悲しみを
知ろうとしないからだ。それでも老人には次の世代に伝える義務を負っている。
自分が見聞したこと、感じたこと、苦労したこと、それらを整理して語るのが
家族や後輩への優しさであり、社交であり、教育であり、連帯感であると思う。
死は誰もが公平だ。だから自分だけが正しいと思わず落胆も絶望もせず世間の
様々な矛盾は本当に面白かったと言って、この世をおさらばすれば悔いはない。