隠居の独り言 130

年金は老後の生活の生活費そのものだが年金格差が酷すぎる。一例は収入ある人の全て年収600万円で平均余命を全うしたと仮定した場合、夫婦ともに会社員であれば、年金の総受給額は1億384万円となる。しかし夫が個人営業で妻が主婦であれば、年金の総受給額は3,432万円で、比較すると約7,000万円もの格差が生まれ、つまり基礎年金だけで厳しい生活を強いられる。それも25年間に納めた人で、月額一人65000円が支給される。でも払えない時や、不足などで、それすら貰えない老人の多さよ。一人の帽子職人のAさんの国民年金履歴と実績を明かしてみる。Aさんは戦後間もなく新潟から15歳で上京し、帽子職人の家で丁稚奉公の修業で腕を磨いて30歳まで同じ場所で働いていた。同僚の女工さんと結婚して独立し、小さな路地裏の家を借りてミシンや縫製に使う道具を揃えて親方から仕事を貰い奥さんと二人で朝は早くから夜は遅くまで休日も殆ど無く、働き通した。やがて子供二人にも恵まれ、奥さんは赤子を背負いながらもミシンに座り、忙しい時は学校の行事にも参加出来なかった。それでも路地の奥の小さなマイホームを買い忙しさの中にも、ささやかな幸せを体験した職人夫婦の睦まじい生活だったが数十年の歳月が流れ気付けば子は家を出て老夫婦が残る。Aさんは現在77歳、奥さんは75歳、国民年金の給付金は夫婦合わせて約12万円+現在も働き工賃で暮らしている。しかし寄る年波に勝てず労力も眼も疲れ労働時間も短縮し、その分の賃金は減って、あと何年続けられるか分からない。先日もふとした怪我で一ヶ月も休む羽目になってしまった。無論その間は、賃金はゼロで逆に治療費が出費となって生活に直に響く。帽子の縫製工賃は250-400円ぐらいで一日の生産量は二人共同で30-40個。季節的な商品は年間を通して仕事が有るとは限らない。歳を取っての怪我、病気には収入面と治療費が重なり普通の生活は覚束ない。しかし職人は年金の他に働けば収入があるからまだいい。それが国民年金の実態で、退職金も無いあらゆる産業の職人は技術立国の日本の縁の下の力持ちで手に覚えた彼らの匠の腕が無ければ我が国の繁栄は考えられない。職人に、報われない何とつれない政治の政策なのだろう。「悠々年金暮らし」をしている方々に言いたいのは年金の不公平と我慢に耐えている人の苦しみを知って欲しい。