小僧(縁日)

会社では見本残りや売れ残ったものはテキヤと呼ばれる露天商に
二束三文の値段で売り、それらを彼らはあちこちで開かれている
縁日で売りさばいていた。東京の縁日のあるのは例えば神田明神
水天宮、とげぬき地蔵、芝の金比羅宮、富岡八幡、毘沙門天等々
毎日のようにどこかで開かれて、休日などはよく自転車に乗って
縁日で遊び顔見知りの露天でヤキソバやお好み焼きなど頂いた。
当時の縁日は今では想像もつかないぐらい色々なものが売られて
人出も多く大人から子供まで楽しみ夜遅くまで遊んだものだった。
食べ物ではヤキソバ始めべっ甲アメ、カルメ焼き、大砲、綿菓子
レモン水、バナナの叩き売り、もんじゃ、動物を作るアメ細工は
いつも人だかりだったし、着る物では古着や靴、帽子など並んでいた。
傷痍軍人はアコーデオンを弾き、ヴァイオリン演歌師の公演もあった。
小動物では金魚すくいのほかヒヨコ、亀、うなぎなどでコマネズミや
山椒魚など買った人はどうしたのでしょうか。ともかく小僧にとっては
東京見物も兼ねた縁日巡りは、数え切れないほどの珍しいものや面白い
ものを知ったことでも貴重な体験の一つであったに違いない。