小僧(花札)

月の支払日に職人さんたちが夕方に集まって仕事話や親睦の意味もあって
みなで飲食の後、無尽(お金を出し合って入札する一種の融資制度)など
して、あとは花札遊びに夢中になった。遊び方そのものはコイコイだけだが、
その前の段階でサイコロの丁半、配られた札のアトサキ、から燃え出して
賭け過ぎて、入った工賃の大半を取られた人も居たりして、座布団前にして
カッカ熱くなって勝負するあの姿の“くりからもんもん”は今も忘れられない。
昔の職人さんの中には入れ墨などしている人もいて生一本な職人気質が多かった。
勝った人は廓などに繰り出し、負けた人はヤマノカミの待つ家へ赤い目をして帰った。
しかしあの花札の四季を表す素晴らしいデザインはいつの頃から生まれただろう。
松、梅、桜、藤、菖蒲、牡丹、萩、坊主、菊、紅葉、雨、桐そして動物や短冊など・・
ブタ、ピン、ニゾウ、サンタロウ、ヨツヤ、ゴケ、ロッポウ、シチケン、オイチョ、カブ。
数え方も花札用語でオイチョカブやピンからキリまでの言葉はここから来たらしい。
日本人の四季への秀逸な感性はトランプなどの及ぶところではないがカード遊びで
花札は品が悪くトランプは品がいいなんて思っている方が多いが私には解せない。
“打つ”の一端を見た若き日の小僧の体験だった。