日露関係(1)

ロシアのプーチン大統領が11月に来日する予定と言う。細田官房長官は記者会見で
「五ヶ月間の折衝のレベルで領土問題などこれから進展すると思う」と楽観的だが
いままで何回となく騙され、その都度四島の援助やシベリア開発など何かと資金を
巻き上げられてきた日本は、オオカミ少年がまたやってきたとしか思われない。
先日ロシアの古都サンクトペテルブルグで行われた民間企業のトヨタの起工式で、
わざわざモスクワから駆けつけたプーチンは何を思い、何を企んでいるのだろう。
多忙のはずの大統領が来るには、それだけの理由があるはずだが、日露平和条約の
懸念を棚上げして、多額の投資を世界的企業トヨタから呼び込む意図に違いない。
前回の外相会談ではロシアは二島返還で決着したいらしいが、それとていろいろと
難癖を付けて無償で返す気持ちなどさらさら無いだろう。戦争末期のどさくさ紛れに
獲得した「戦利品」である日本固有の領土の千島を返還するとは到底考えられない。
戦争で取ったものは戦争で取り返すのが国際政治の厳然とした法則のようなものだが
ただアメリカは世界でも例外的に沖縄、奄美、小笠原、硫黄島などを日本に返還して、
その後の日米関係の絆をゆるぎないものにして政治的に大いに成功した一例だろう。
ロシアの外交はしたたかだが日本もそれに負けず、ある程度の狡猾さも必要と思う。
100年前の日露戦争の時にロシアの背後から革命の手助けをした明石大佐のような
優れた人物が今の日本に請われているが、真正面からぶつかっても敵わぬ相手には
むしろ遠くから眺めているだけでいい。中韓にしてもロシアにしても60年以上前の
祖父の時代にあった負債をいつまでも引きづって苦労するよりも視野を変えて見よう。