内憂外患(1)

弊社の所在地の墨田区はかつて繊維、機械、食品、諸工業等あらゆる産業の
職人の町だった。戦後の経済成長期には、朝早くから夜遅くまで職人たちは
無我夢中に働いていた。弊社は繊維産業の一端を担っているが、最盛期には
仕事が捌ききれないほどあって一年を通して休日などはほとんど無かったが
職人たちもそれを苦にせず、むしろ働く事に生きがいを感じて熱中していた。
それが何時の日か衰え始めて、どの産業も斜陽的になって、墨田区の人口も
かつての44万人も今は22万人と半減してしまった。職人の後継者不足と
産業の多様化、そして最も大きな理由は人件費高騰のあおりで東南アジアに
生産拠点を移し変えたのが斜陽に拍車を掛けた。資本主義の競争社会では
仕方ないにしてもあまりの急激な変化についていけず職人や、零細企業は
廃業、倒産の憂き目を見る結果になるところもあって前途は厳しいものだ。
繊維産業の場合、中国の縫製工場で働く工員の時給は日本円に換算すると
約50円でしかも4時間制で集中して仕事をこなし私事私語は許されない。
日本だとパートの人は時給約900円で食事、休憩時間等も含まれている。
正社員ともなれば時給に換算すると2-3000円ぐらいになるのだろうか。
これでは勝負にならない。たしかに物価は安くなり一般の生活は向上した
けれど、裏で泣く人々も大勢いることを認識して欲しいと思う。