隠居の独り言(7)

家の近くに回転寿司の美味しい店が出来て家内とときどき食べにいっている。
回転寿司の仕掛けはうまい事を考えたものだと前にも書いたので置くとして
箸を取りながら思うのは、この値段で食べられる寿司のネタはどこで獲れた
ものだろうと考えてしまう。例えばエビなどは東南アジアの養殖池で生産され
関連の工場で労働賃金の安い女工さんたちが頭や殻を取り皮をむいてすぐに
食べられる状態で日本に輸入されているが、たまには営々と働く東南アジアの
人たちの姿を想像してみてはどうだろう。彼らは中身を輸出してエビの殻だけ
焼いて食べている。食べ物の好き嫌いを言っている人の傲慢を知る思いがする。
もっとも栄養学的にはカリシウムが一杯でそちらのほうがいいのかも知れない。
私が子供の頃の魚屋では魚体そのものを売っていて家で包丁捌きをしたものだ。
台所には出刃から細身まで何本かあって魚の大小に合わせて調理をしていた。
母は鰻を裂くのが得意で子供たちが近所の川や沼で獲った鰻を上手に裂いて
蒲焼にして家族で食べた思い出は今も蘇ってツバが出てくる感じがしてくる。
今の若いお母さんは魚に包丁を入れることもなくてスーパーで売っているのは
サシミにツマも付いてそのまま食べられるし一体の魚も鱗やハラワタも取れて
そのままオーブンに入れれば美味しい焼き魚が出来る仕組みになっているが、
これでいいのかなぁと変な勘繰りと心配をする私が時代遅れなのだろうか。
食べ物に困らない、という幸せを回転寿司の席でふと感じた。