隠居の独り言(29)

ケータイ・パソコン・ロボット等々、とても文明の発達には附いて行け
ないほどに人類は進歩しているが私が生まれた僅か70-80年前の日本は
殆んどの人が田んぼや畑で菅笠被って土地を耕していた農業国家だった。
大正ロマンや昭和モダンも流行の一部に過ぎなかったし人口の9割方は
「日本昔話」の世界のような自然溢れる中で悠久の時を実感していた。
反面に厳しい環境や辛い農作業も体験したが、それ以上に暮らす人々の
心は素朴に清らかに澄み、なにより互いを信じあえる秩序が保たれていた。
人類が誕生したと云われる数十万年前から徐々に歩いてきた進歩の指数は
ここ一世紀で一挙に変貌を遂げ技術文明の発達はやがて人口の爆発を招き
自然の破壊や人心は荒廃し便利な事の裏腹にマイナス面の多いのに気づく。
私の生きた時期が人類の曲がり角に当たった事は幸か不幸か分からないが
最近になってやっと失った道徳とか倫理についての論議がやかましいのは
とても結構な事だが、人心の退廃の原因の多くは戦後の自虐的な教育の
考えに他ならないと思う。今の大人も小さい頃から教えられた学校での
教育は戦前の全てが悪者でそれを批判し裁くことばかりに育てられては
仕方ないだろうが戦後も半世紀を過ぎてここにやっと本来の戦前の姿を
まともに見ようとする気持ちになったのは嬉しい。つづく