隠居の独り言(31)

今の小学校の音楽の時間には「日本の童謡」や「尋常小学唱歌」など昔から
歌われた日本叙情名曲が教えられていないのに気づく。旋律も素晴らしいが
歌詞の持つ情操は歌を歌いながら日本の言語文化を理解するうえで最高だと
思うのだが文部科学省中央教育審議会とやらの方々はなにをお考えなのか。
野口雨情、北原白秋西条八十等の詩を読むだけでも子供心に情緒や道徳や
自然を愛する精神の骨格が形成されるはずだが音楽の時間に詩に込められた
意味や背景を説明するだけでもいいと思う。戦前に受けた教育から較べれば
国語力の低下は目に余るものがあるが、世界に誇れる日本語の素晴らしさは
文字自体に意味があって、構造によって自在に変化させる事の出来る言葉を
書いたり語ったりする良さを、子供の頃からしっかりと身に付けさせるのが
本来の教育方針と思う。大人になってからの優しさと厳しさは言葉ではなく
幼い頃の体験が効いてくる。先日に発表された中央教育審議会報告案では
「義務教育終了までに常用漢字の大半が読め1000字程度の漢字が書ける」と
あるが何を考えているのだろうか。頭の柔らかい小学生なら2000字ぐらいは
習得出来るはずだ。役人は未だに「ゆとり教育」にこだわっているが日本語の
素晴らしさを後世に伝えたい。戦前の小中学生は漱石や藤村などの文語体の
本を回し読みしたものだった。家庭でも学校でも子供に読書に親しむ習慣を
つけて欲しいと願うのは言をまたない。  つづく