隠居の独り言(39)

健康には食事睡眠運動の三点セットに一年一回の健康診断は欠かせない。
60歳を過ぎてからは毎年人間ドックに入っているが、いまから4年前の
血液検査で前立腺腫瘍マーカーPSAの数値が上がって不審船が疑われ
精密検査を受けてやはり前立腺ガンとの告知を受けたがあの時の気持ちは
言い表せないほどのショックで狂いたいほどの恐怖心と絶望感で苛まれた。
医学本を見たりPCで調べたりすればするほどその焦燥感を深めてしまう。
それまでガンは他人事のように思っていてまさかこの自分に降りかかって
来るなんて始めは信じられなかった。偉そうな事を言っても人間の気持ち
なんて弱いものだと思い知らされたが、反面に生きる喜びも教えてくれた
あの告知は今にして思えば自分の人生観を変えたいい経験だったと思う。
前立腺の摘出手術は医師に説明を聞いただけでも難しい仕事だと感じた。
前立腺と精嚢を切除しさらに膀胱と尿道をつなぎ合わせる手術とのことで
血管、生殖管なども切断して再び縫い合わせ、途中にリンパ節の転移等を
調べる作業だがAM9,00に手術室に入り終わったのはPM4,00の長時間を
要する大手術だった。もし途中の検査でリンパにガンの転移が見つかれば
手術中止との約束があって心配したが、本人は全身麻酔をされているので
何も分からないが廊下で待機している家族にとってせつなくやりきれない
地獄の時間であったと思う。人は一人では生きていけない。一つの体験が
心の脱皮をした気がした。 つづく