隠居の独り言(82)

日本は既に憲法違反をしている。警察予備隊から始まって現在の自衛隊
至るまでの経緯は完全に軍隊組織であって、まして世界第二位の軍事費を
掛けた戦力は「戦力を保持しない」の9条には当てはまらないのは明白だ。
けれど国民の大半はそれを認めて、自衛隊には違和感が無く空気のように
感じているのはどうしてなのだろう。憲法から考えればあってはならない
軍隊組織が存在して抵抗感も無いのは日本を取り巻く世界の情勢から見て
必然的と見なしたからに他ならない。けれど繰り返すがこれは憲法違反だ。
戦前にも似たような憲法違反があってそれが日本の破滅へと繋がっていく。
いわゆる「統帥権」というもので当時制定されていた明治憲法の11条は
天皇ハ陸海軍ヲ統帥スル」とあったが、それを軍人たちが悪用した。
戦争を始めるのも終わらせるのも選ばれた政治家の高度な判断であって
軍人の口の挟むものではない。文民統制シビリアンコントロール)だが
それが欠けたために「統帥権の拡大」との勝手な理屈で満州事件を起こし
出先機関関東軍中央政府に無許可で戦争を始めて、日本は国家として
統制の取れない「二重政府」となり昭和の悲劇はそこから始まっていく。
「統帥スル天皇」のあずかり知らないところで戦火は拡大して事後承諾の
カタチで暴走する軍人達を誰も止めることが出来ないほど日本は荒んだ。
伊藤博文たちが作った立派な明治憲法があったのにそれを守れなかった
昭和のリーダーは世界の流れを読めなかった愚人と言われても仕方ない。
つまり今も昔も憲法の「拡大解釈」はどのようにでも変化する恐さを
国民の大半が意識していないのが似ているようで空しい。 つづく