隠居の独り言(101)

先日の新聞報道によると認知症アルツハイマー病に罹ったり或いは似た
症状の人が約1000万人とかでその多さに驚いた。先日風呂の中で気持ち
よく昔の唄を歌っていた。「菜の花畑に入日薄れ 見渡す山の端 霞深し」
そして歌いながら気が付いた。あれ?題名はなんだっけ?全て忘却の彼方。
子供の頃に覚えた尋常小学唱歌は何百回となく歌っているので歌詞の方は
浮かんでも題名までは思い出せない。しかもあの頃は意味なんて分からず
難しい言葉などもそのまま暗唱した。「春高楼の花の宴」「甍の波と雲の波」
「さ霧消ゆる湊江の」等々、歳を取ってもいまだに分からない言葉もある。
「埴生の宿」ってどんな宿?「卯の花」ってどんな花だっけ・「庭の千草」
と聞いて白菊とばかり思っていたらいろいろな草を総合したものらしい。
戦前と違って、今の音楽の教科書からは難しい歌詞の歌は消えてしまった
けれど日本語の深みのある美しさや情感はおぼろげに身に付いたと思う。
養老孟司さんの説では人間の脳の中にある記憶を司る部屋は収納能力には
限りがあって歳を重ねて新しいものが入ってくると、その分がはみ出して
しまうらしい。その際に意外に幼年時代がしぶとく残って忘れないそうだ。
老人ホーム慰問の時など、お年寄りが子供の頃に歌った童謡や小学唱歌
好まれるのは昔の原風景に戻って自然に脳が刺激を受け啓発されて元気が
戻ってくるというが「音楽療法」の一つで自分も楽しんでお年寄りにも
喜んでいただく、こんな「いい遊び」が出来るのは嬉しい限りだ。