隠居の独り言(104)

二枚目俳優の岡田真澄氏(70)、エッセイストの米原万里さん(56)が相次ぎ
癌で亡くなった。ご冥福をお祈りするとともに何ともいえぬ無常を感じる。
お二人にとって命の定めとしか言いようがない。かたや徳島市民病院では
104歳の女性が大腸がんを切り取る手術に成功したという。100歳以上で
がん切除手術は今までに例がなく医学の進歩もここまできたかと感慨だ。
云うまでもなく日本人の死因一位は癌だが、もし癌を征服出来れば現在の
世界一を誇る平均寿命がさらに10年延びて男88歳、女94歳となるらしい。
長寿は目出度い話しには違いないが、はたしてそれが素直に喜べる環境が、
つまり幸せな高齢化社会があるだろうか。老いて生きる喜びは夢と楽しみが
必要だが少子化が進む時代は老人が増え続け年金や介護の問題が深刻化して
お先が明るいとはとても言えない。自分ももし100歳まで生きるとしたら
どうすればいいのだろう。考えても今以上の事は出来そうもないし生活が
徐々に落ちていくだけで、顔がしわくちゃになり姿格好が醜くなるだけの
ことだが、それが将来の100歳までの軌道とすれば、ただ鶴亀のように
長生きすれば幸せというものじゃない。岡田真澄のように美男子のままに
散るは男の最高の美学だろう。彼の100歳の姿かたちは想像したくない。
昔の老人は若い人から敬われて後進に範を垂れる知恵者が多かったと聞く。
隠居なり翁になって尊敬を受けたが、今の老人は進歩する世の中に付いて
いけずに、ただ歳を取っただけの無内容で周囲からも疎まれて生きている。
これも世の定めなのか。