隠居の独り言(111)

今の学校で教わる社会学は知らないが、かつての職業経済学は三種類に
分類されて「第一次、第二次、第三次産業」となり第一次は農、漁、林
などで働く人、第二次は製造業などで働くいわゆるブルーカラーの人で
第三次はサービス業に従事するホワイトカラーに分けられていた。
今までの概念からいえばホワイトカラーは白いYシャツにネクタイ姿で
会社や官庁に勤めるサラリーマンが浮かぶが、最近の職種は実に多様で
何かの訪問販売やビラ配りやコンビニの販売員まで、おおまかにみれば
第三次産業にはいるだろう。話は飛ぶが先日電車の中でネクタイをした
りゅうとした紳士がご婦人には憚れる雑誌を堂々と読んでいた。紳士は
どこのどなたが存じないが人は見かけによらないのを痛感させられる。
ところで第二次産業の我が社は帽子を作っている。職人が作った帽子が
消費者の手に渡るまでどれほどの人が携わり工程を経たか考えるだけでも
膨大な事だと思う。まず生地も毛、綿、化学繊維など素材も多種多様で
それらの糸を作り紡いで反物が出来デザインされた色柄を、これもまた
企画された帽子の型で裁断し、何十種類もの付属品を取り揃えて縫製を
するが、ここは匠の世界で寸尺の違いも許されない。ブランドによって
作り方を変え、売り先によって形や付属品が違ってくる。製品の完成は
第二次産業を離れて第三次産業に移ることで、ここから売り先の商社や
売店がホワイトカラーで接客して消費者に渡るシステムになっている。
繊維産業は米や麦等の農産物、漁業や銀行などと違って国や政府からの
何の保護政策もなく世はまさに戦国時代で互いにしのぎを削っている。