隠居の独り言(128)

元首相の橋本龍太郎氏が亡くなられた。父親の後を受け継いだ二世議員
26歳で初当選して以来総理にまでとんとん拍子に出世の自民党の若旦那も
病気には勝てず68歳の若さで泉下に没した。晩年は歯科医師連盟からの
ヤミ献金疑惑で政界を降りたのは元親分だった田中角栄の末路に似ている。
剣道5段の歩く姿は背筋をピンと伸ばし趣味も多彩でハンサムな大名顔は
女性からは圧倒的な人気だった。先に70歳で早世した作家の久世光彦
「煙草は優しい麻薬である」と語ったが元首相も粋に煙草を嗜んでいた。
でもその格好良さや顔に似合わず政策には新鮮な若さが欠けていたような
気がする。失政続きで景気後退した社会党村山富市首相の後を継いだが
消費税5%へ引き上げ等が景気の足を引っ張って銀行・証券会社の破綻が
相次ぎ国債が膨らみ今も後を引いている。たしかに経済の先行き見通しは
難しいだろうがキングメーカーで威勢の良かった角栄親分のハッタリ位は
欲しかった。総理とはすなわち日本の顔だが、いつもシカメッ面の形相は
折角の美男子が泣いていた。歴史の皮肉か亡くなったその日に10年前に
総理の椅子を争った小泉純一郎は首相としてアメリカのブッシュ大統領
プレスリー博物館でラブミーテンダーを歌い我が世の春を謳歌していた。
行革の道は橋本が唱え小泉がそれを実行した。運はそういうものだろう。
橋本はロシアのエリツィン大統領や中国首脳部とはとても親密だったが
それぞれの首相は外交的には東西両極を行っている。どちらが正しいか、
その結論は何十年後かに歴史家に任せるしかない。