隠居の独り言(141)

私は時代小説が大好きだ。司馬遼太郎池波正太郎藤沢周平山本周五郎
海音寺潮五郎吉川英治など読んだ作家の作品は数え上げればきりが無い。
時代小説の面白さは決まっている歴史の事実を作家によって想像力の産物が
違って時代の背景や登場人物の魅力を存分に出しているのが凄いと思う。
例えば小泉首相も尊敬しているという織田信長。この人ほど光と影の部分が
はっきりとしている日本史上の人物はいないと思うが光の部分はそれまでの
閉塞感のあった国の既成の体制や権限を崩壊させた先見性や果敢な行動力で
世界を見ようとして日本人の意識を向上させた業績は誰よりも素晴らしいし
その後の日本史を見ても彼に勝る大人物は二度と現れなかった。織田信長
本能寺の非業の死がなければ、世界に向けて覇権を唱える器量とチャンスが
あったのに惜しい事をしたものだ。日本が大きく世界史を変えていただろう。
その光の部分は素晴らしいものだったが影の部分もそれに増して凄いものだ。
僧俗4000人を殺害した叡山焼き討ち、一向一揆の20,000人の長島や越前の
虐殺、荒木一族の全員殺戮など嗜虐的な性格は、後のヒトラースターリン
毛沢東ポル・ポトなどの20世紀の暴虐者となんら変わるところが無い。
誰もが光と影を背負っている。生きてきた今まで良かった事と後悔した事、
あざなえる縄の如しだが体験が深ければ深いほど魅力もまた大きいと思う。
時代物を書く小説家は同じ歴史上の人物でも捉え方がそれぞれに違っていて
なかなか面白いが、時代背景のもと市井に生きる庶民を描いた作品も好きで
読んでいると昔も今も基本的には人間のものの考え方や感じ方、人情味等は
変わっていない事に安心もし、今日も楽しく読んでいる。