隠居の独り言(148)

最近の凶悪犯罪は自己中心的で平気で人を殺めてお金や物品を強奪するのが
通常のようになってきているが日本人の心情も随分と堕ちたものだと思う。
今、池波正太郎の「鬼平犯科帳」を再読しているが、あの頃の闇には消えた
多数の盗賊たちは「盗人にも三分の理」があって、盗まれて難儀する家には
入らず盗まない、殺さない、女を犯さないの三か条の掟があり主人公鬼平
悪党のたぐいによって立ち向かう姿勢が違ってその辺の按排はとてもいい。
TVの演ずる長谷川平蔵も格好良かったし日本人の心情を描いた傑作だった。
無論なかには畜生ばたらき、急ぎばたらきなどする許しがたい残虐な悪党も
いたけれどそれでも彼らは育った環境や困窮の末の切羽詰った犯行が多くて
根っからの悪人像はたとえ時代小説の創作の世界といえども感じられない。
池波さんだって小説のモデルは現在生きる世相の中の日本人を書いたはずで
もし今存命されて執筆されたらあの「鬼平犯科帳」はどの様な人物と物語に
なっていただろうか。日本史に精通され日本人の心を知りつくし、人情話の
数々の時代本を書かれた池波さんも平成の時代がこんなにひどいとは思いも
よらなかったに違いない。親殺し、子殺し、幼児殺害、強盗殺人等々最近の
犯行の悪質さと日常茶飯事のように多発する昨今はこれが日本人のDNAを
受け継ぐ人のやった事なのか、それとも人種がどこかで違ってしまったのか、
思いたくないが世相は確実に悪化が進んでいる。