隠居の独り言(162)

AP通信社の写真記者として1945年2月の硫黄島のすり鉢山の頂上で
星条旗を立てようとしている6人の米海兵隊の写真を撮った撮影者の
ローゼンソール氏が亡くなった。写真は戦時中アメリカ国民を熱狂させ
「世界で最も美しい戦争写真」ともてはやされ切手や銅像にまでなった
映像は日米の血みどろの死闘の末のものだが、日本軍は玉砕して米軍の
死傷者は日本軍を上回る29,000人を越えるに至るが戦争の生きる極限を
超える体験を強いられただけにあの一枚の報道写真が彼我や国境を越えて
感動を与えてくれたのかもしれない。大戦も遠い過去のものになったが
あの硫黄島の日米の死闘が「ほんとうの戦争」の終わりだった気がする。
それ以降アメリカはサイパン硫黄島の空港から日本全土に無差別爆撃を
繰り返し3月10日の東京大空襲をはじめとして各都市を壊滅させ最後の
とどめは広島長崎の原爆投下で日本の都市の殆どは焦土となり完敗した。
爆撃の日本人の死者は200-300万人を超えていると云われるがその殆どが
民間人で戦闘員以外の殺傷を禁じたウイーン条約にも違反している。
戦争の定義は戦闘服を着た軍隊同士が戦うものであり無抵抗の民間人や
まして女子供を狙って殺戮の限りを尽くすのは民族浄化ホロコースト
何処が違うのだろう。硫黄島が陥落した時点で日本は白旗を上げるべきで
玉砕した戦士は浮かばれない。戦後に開かれた極東対日軍事裁判のなかで
「人道に対する罪」の項があるが、連合国もよくぞ言えたものだと思う。
「平和に対する罪」はいつか書きたいが、ローゼンソール氏の訃報を知り
あの報道写真を懐かしむとともにナショナリズムの大切さと醜さを考えた。