隠居の独り言(207)

秋「灯火親しむの候」10月27日から始まった読書週間は11月9日までの
二週間だが、最近の若い人の読書はおろか新聞も読まない傾向でケータイや
インターネット、TVなどで簡単に情報や娯楽が得られるから余計にひどい。
私事を書くのもはばかれるが小学高学年の頃から家庭の事情で学校も通えず
中学校はロクすっぽ登校出来ずに卒業証書だけはいただいた。けれど救いは
家に本があって暇を見ては読み漁った事だ。吉川英治島崎藤村田山花袋
森鴎外夏目漱石石川啄木など父が出征中で残してくれた書籍を片端から
読んだのが現在でも精神の栄養になっていることはほんとに良かったと思う。
学歴は無くても普通に生きてここまでやってこられたのも少年時代の読書が
生きる糧となって物事の判断力を誤ることなく過ごせたのは一番の収穫だ。
太陽に感謝し月を愛でる何気ない情感も読書が出発点だし、恋のときめきも
失恋の苦さも本が和ませてくれた。今の恙ない生活も読書の肥やしと思う。
人生は有限だ。実生活でこの世の無尽蔵な知識や体験を知ることは不可能で
そこで読書が必要なのは言うを待たないが情緒をはぐくみ善悪の判断を養い
人間の基礎を作るには何よりの処方箋は読書が最高と思う。今は幼い孫達が
字や言葉の知識を吸収する最も大切な時期と思うので、その子に合った本を
買い与えて読む習慣を付ける事にしている。成長しての言葉の良し悪しは
国語力を涵養する事で本の中から感動や知識も身に付き言葉に発揮出来る。
いい本をたくさん読もう。言葉の美しさはまたその人を美しくする。