隠居の独り言(244)

昨夜はNHK大河ドラマ功名が辻」の総集編を見たが一年を楽しませてくれた
一豊(上川隆也)と千代(仲間由紀恵)の夫婦物語の今更ながらいい人生を見せて
くれたドラマに拍手を送りたい。原作の司馬遼太郎も地下で喜んでいられるだろう。
時代小説の大筋は変えようがないが細かい人間関係のアクションは作者が創作した
ストーリーでその表現力や人心の入れ方が彼の器量と面目躍如たるところだろう。
司馬作品が好きでその大半を愛読したが、その史観はあくまでも中立で際立った
理論や思想を省いて人間性豊かに描かれた小説はどれほど私の血になった事だろう。
街道をゆく」にも書かれているが司馬遼太郎は土佐の地が好きで「功名が辻」を
始め「竜馬がゆく」「戦雲の夢」「夏草の賦」「酔って候」「土佐の夜雨」他などの
土佐にまつわる物語が多いのに気付く。作家が言いたかったのは人生の巡り合わせ、
善いも悪いもそれはまこと摩訶不思議で「功名が辻」の筋書きも一夫婦の出会いが
まつわる人々の運命も左右されていく。それは今にも言える人生の生き様だろう。
来年の大河ドラマ井上靖原作の「風林火山」は武田信玄市川亀治郎)に仕えた
山本勘助内野聖陽)が主役のようだが二人の巡り会わせが、まさにしっくりと
あの時代に甲斐の一武将だった武田が天下を目指す大名に伸し上がっていく過程を
描いたもので下克上の縮図がそこにあり戦国絵巻を見るような展開があるだろう。
人間は一人では生きて行けないが、出会いによって大きな幸せを掴む人もいれば
悪魔に憑かれたように不幸に沈んでいく人もいる。山本勘助の格好は片目で片足が
悪く背高も五尺足らずの貧相な男だったらしいが(内野聖陽とはイメージが違う?)
信玄と知り合う事によって持ち合わせの緻密な戦法は実際に作戦に参画して陣取り
城取りの才能を存分に発揮出来たのは信玄あっての勘助だし勘助あっての信玄だった。
原作では川中島の合戦山本勘助上杉謙信(ガクト)に戦法を見破られ戦死する
ところで終わっているが大河ドラマはどこまで続くのか今から楽しみにしている。