隠居の独り言(255)

文化庁は14日に一般公募の中から選んだ「親子で継ごう 日本の歌100選」を
発表したが、美しい日本の歌を継承していく試みはとてもいいことだと思う。
世代を問わず親しく口ずさめる歌は「赤とんぼ」「さくらさくら」「海」などの
古い歌から戦後のヒット作の「上を向いて歩こう」「いい日旅立ち」「秋桜」や
平成に入って2001年の夏川りみの「涙そうそう」、2005年にSMAPが歌った
世界に一つだけの花」までの100選を見てみると実にいい歌が選ばれている。
これはぜひ小中学校の音楽の教材には率先して先生が生徒に教えて欲しいものと
熱望する。歌詞は日本語のよさの極みでメロディは情緒的で日本人ならではの
情感に満ち溢れているが、現在使われている音楽の教科書は昔の歌が極端に少なく
「戦前全て悪」の思想がこんなところにも影響されてアニメの歌や最近作られた
反戦歌などが多く、歌っている子供たちを聞いているのは何ともやりきれない。
役所ひとつも文化庁文部科学省の考えがこうも違うとはいくら縦社会といえども
由々しき問題で教育の中に折角の美しい歌の文化が反映されていないのは何故か。
聞くところによると歌詞の文語体が難しいからだそうだが、それでは教えればいい。
国文の勉強にもなるし、それが教師たる務めで出来ないのはその資格を質したい。
例えば三木露風の「赤とんぼ」は♪夕焼け小焼けの赤とんぼ、負われて見たのは
いつの日か・・だが「負われて」を「追われて」と思っている人が多いがこれは
三番に出てくる「ねえや」か「母親」かを想像するのも情緒の教育の一環と思う。
露風は幼いときに両親が離婚するが、この歌も彼自身が失われた愛の哀しさを詩に
したものでその辺りの情感も子供たちに説明する情操教育にはうってつけの歌だ。
これから学校の卒業シーズンだが、100選の中には昔の卒業式の定番の曲だった
仰げば尊し」が入っているのも嬉しい。中学校を卒業した時の在学最後の歌で
仰げば尊し 我が師の恩 教えの庭にも はや幾とせ」はいつ聴いても涙する。
当時の恩師は川崎先生だったが卒業式に生徒代表で答辞を読ませてくださったし、
進学が叶わない私を憐れんで何度か我が家を訪ねて両親に勧めてくださった事も
今は懐かしい思い出だ。いい師に巡り合えた自分もとても幸せだったといえる。
とにかく日本人に生まれた幸せを、いい歌に託して継いで欲しいものと感じた。