隠居の独り言(282)

戦国大名は領地と領民を管理するかわりに一朝、国境付近において事ある場合は
身を挺して外敵の侵入を防ぎ、領民を充分に安堵させる最低限の義務があった。
国境の異変の知らせが入ると、領主たる大名は領内各地の武将に動員令を発して
兵を集めなければならない。戦国時代初期では兵農分離も進んでいなかったので
農民もかり出されて一国全員総力戦のようだった。それは相手側も事情は同じで
たとえば田植えの時や秋の収穫の頃は、合戦は行なわれず季節を選んだようだ。
鎌倉時代は個人の武勇や名誉を甚だ重んじ将と将との一騎打ちが大勢を決めたし
それに従う農兵たちは強い武将に慕うのが風習のようだった。戦法戦術の変化は
やがて軍団の組織を必要として足軽のようなプロ集団が結成されたのは、時代の
進化だったのだろう。そうなると平時は農民で、事あるときは兵になるといった
形では到底即応出来ず、プロの専従武士たちが生まれるようになって戦国時代は
熟していくが、早く兵農分離に成功して軍団の中の専門部隊を作り上げた大名が
勢力を広めていった。結果的には織田信長がそれらに成功し戦国時代を収めるが
NHK大河ドラマに出てくる武田信玄市川亀治郎)は信長より前に兵農分離
考えを持ち軍団でも土工兵、徒歩兵、騎馬兵を分類して戦闘に当たっているのは
当時の大名たちの中では群を抜いていた。ドラマの中で山本勘助内野聖陽)と
平蔵(佐藤隆太)が信濃真田幸隆(佐々木蔵乃介)の客分となるストーリーだが
真田といえば子供の頃、真田十勇士や講談本等を読んだだけに面白くなってくる。
真田十勇士の本では猿飛佐助、霧隠才蔵、三好青海入道などの痛快な活躍ぶりの
シーンの連続で読んで血が沸き胸躍ったもので感激は数え上げればキリがない。
真田には軍師や武術の優れた家来が多く山本勘助と結びつけた発想はとてもいい。
来週の晴信と勘助の対決シーンがとても楽しみになってくる。