隠居の独り言(298)

先の大戦で日本がアメリカに負けたのは圧倒的な戦力の差、つまり経済力の
違いであることは言うを待たない。それは古今東西のあらゆる戦争の歴史は
軍事力の差で勝負がつくのは当たり前だが、今でも経済や軍事でアメリカを
敵に勝てる国はどこにもない。16世紀の戦国時代でも守護大名達は経済の
面でも苦心して軍資金を集め、兵を募るのが一苦労だったようだ。支配する
土地に暮らす農民から作物や年貢を徴収するのが歳入の大半としても農民も
田畑を守ってもらう反面、あまり過酷だと反抗して一揆が起こったりした。
一朝、事ある時は農民も狩り出して兵として使ったが、あまり役には立たず
枯れ木も賑わいの例だったそうだ。足利幕府はその家来の細川氏大内氏
山名氏などより領地や石高が少ないのに経済力があったのは「明」の貿易を
独占していたからで天皇家や貴族も、そのおこぼれに預かって暮らしていた。
戦国後半の織田、豊臣、徳川も圧倒的な経済力は他を抜きんで天下を取った。
NHK大河ドラマ武田晴信市川亀治郎)は甲斐の甲州金を独占的に手に
入れて潤い、敵役の上杉謙信(ガクト)は佐渡金山を支配下にしたのが強い。
ドラマは信虎(仲代達也)と晴信の父子の骨肉の争いだが、家来の立場では
相手によって自らの命運が掛かっているので板垣信方千葉真一甘利虎泰
竜雷太)の重臣の言葉に従い晴信に味方して武田軍団を支える道を選ぶ。
真偽の点はともかく子が親を追放する倫理に反する行為は晴信にとっては
辛かったに違いない。山本勘助内野聖陽)にとっては武田信虎を恋人ミツ
貫地谷しほり)の仇として闘う運命になっていく。信虎に最後のとどめを
刺せないのは勘助の大人の分別だろう。筋書きとしては脚本の大森寿美男
とてもいい出来だと感心しながらドラマを楽しんでいる。