隠居の独り言(318)

「本当を言えば私の奥底では喜劇俳優よりも偉大な悲劇俳優になりたかった」
有名なチャーリー・チャップリンの言だが、この偉人にしてこの言葉ありで
人は生きたいように生き、希望通りの人生を歩めたら、どんなに幸せだろう。
彼は1889年4月16日にロンドンの下町の貧しい寄席芸人の父母から生まれ
辛酸を舐め7歳のときから舞台に立たされた。関係の無い話だが、それから
42年後の1933年の同じ4月16日に大阪の東区平野町で私は生まれている。
チャップリンは84歳まで生きたから丁度人生の折り返し点で不肖の子が出来た。
1933年はドイツのヒトラーナチス政権掌握の年でヨーロッパ全土では戦雲が
高まり、極東アジアでは満州事件を逸機として日本は戦争の機運が進んでいた。
人は顔だけでは心の奥底までは判断出来ない。チャップリンの人を笑わせながら
泣いているようにも見えるピエロのあの顔はヒトラーの顔に似て映画化された
「独裁者」は喜劇俳優の域を出て、悪魔の演技を完璧なまでにこなしていた。
「一人の殺人は犯罪だが百万人の殺人は英雄になる」の彼の言葉はなんとも
鋭い人類への告発文なのだろう。喜劇も悲劇も人間のさじ加減でどうにもなる。
喜劇俳優チャップリンと同じ日に生まれた恥ずかしさと誇りをつくづくと思う。
チャップリンの生涯まで残りカウント10年。あとは神さまの思し召し次第だ。