隠居の独り言(320)

長崎市長の暗殺事件は昭和初期の原敬浜口雄幸高橋是清が凶弾に
倒れた動乱期を思い出すが日本人も最近になりやっと成熟した民族に
なったと感じた矢先に起こった事件だけにとても残念に思う。あのころ
昭和13-4年(1938-9)の頃のヨーロッパは、まさに動乱が始まっていた。
ドイツでヒトラーが政権を掌握すると、またたくうちにオーストリア
併合してリトアニアを占拠、ポーランドに侵攻して英仏と宣戦布告した。
ソ連と不可侵条約をしたが3年後には破棄されて独ソ戦争が開始された。
各国が疑心暗鬼で昨日の友は今日の敵、誰を信用していいか分からない。
当時の平沼内閣の平山騏一郎は「ヨーロッパの大地はまさに複雑怪奇」と
表現した。あれから70年の歳月が流れ欧州はEUの下で暮らしている。
その「複雑怪奇」の情勢は現在は東アジアに移行している感じが濃いが
先週に来日した中国の温家宝首相は「氷を溶かす旅」なんて調子のいい
言葉をいいながら国会演説では歴史認識を言っているのは相変わらずの
中華思想の丸出しの偉そうな大人(たいじん)ぶりを発揮していたが、
片手で握手をしながらも一方の手はこぶしを握っているのと同じ態度だ。
北朝鮮アメリカの譲歩を逆手に取って核問題や拉致にも進展が無いし、
韓国も何を目論んでいるのか分からない。同じ朝鮮民族でも信用し合って
いないのだから日本との外交では推して知るべしで反日ばかりが先走る。
六カ国協議なんて有って無いが如し、腹の探りあいばかりの会議なんて
もう止めたほうがいい。アジアやアフリカが上手くいかないのは民族の
個々の熟成度が足りないからでヤクザの親分のような連中が政権を握り
国家を支配している現状ではアジア版EUはとても無理な話だ。それは
先行のヨーロッパもかつては内戦や民族紛争が絶えない時代が長かった。
アジアが将来EUのような仲のいい機構が出来るのはとても楽しみだが、
花が咲いて実がなり熟すようになる日はまだ遠い先のようだ。