隠居の独り言(346)

歳を取るというのは自分に与えられた命の持ち時間が刻々と減り続ける事で
いくら平均寿命が延びたといえ、目に見えないだけの事で終わりがあるのは
厳然たる事実だ。今年の4月で74歳を迎えたが「もう74歳」と感じるのと
「まだ74歳」と思うのでは気分が違うし、気持ちも持ちかた次第で人生観も
大きく変わる。それでも気は若くても体力は徐々に落ちるのは避けられない。
力仕事、持久力、思考力は落ちて、それに食事の量が減り特に油物は胃への
負担が大きく出来るだけ避けている。増えるのは年齢の数とシワの数だけで
知り合いの数も減り、同年輩の訃報を聞くのが辛いのは他人事でないからだ。
経済面でも盛んな時と違って稼ぐ意欲も薄らぐのは欲望という本能が欠けて
くるのだろう。でも歳を重ねてそれなりの老いの美学があってもいいと思う。
洒落をする、趣味に没頭する、清潔を心がける、品格を意識する、颯爽と歩く、
現実の恋は難しいが恋心は失わない。若い時のように、あれがいいか、これが
いいかとの試行錯誤は許されないが、やりたい事と、やらねばならない事を
決めていかないと残された一生は終わってしまう。人生の仕舞い支度は長年に
溜まった垢を落とす事から始めねばならないが思い出の品々も、薄くなった
人間関係も捨てるに忍びないが勇気を持つのも与えられた使命かもしれない。
丸くなる必要もないし卑屈になって嫌な人に合わせる老い先なんて真っ平御免、
好きな人に好かれるだけで充分だし、自分の人生なのだから自らが思うままに
生きればいい。歩いてきた自らに乾杯出来れば最高と思っている。