隠居の独り言(347)

今日から6月、梅雨の季節は間もなくだが一年を通じて、この時分は最も好きだ。
夏の高温多湿の前に、暑くなく寒くなく、適度な湿り気があって身体にとっても
過ごしやすい時は、一年365日の中でも多くない。子供の頃に父が唄ってくれた
♪あめあめふれふれ、かあさんが・も陽気なはずむ口調が今の季節に合っている。
欧米ではジューンブライドで結婚の季節だが人間に限らず生きとし生きるものの
殆どが恋や繁殖の季節で植物は花から実へと命をはぐくみ、動物は巣作りをして
子育てに忙しい。地球上の生き物達が最も華やかにいきいきと栄えるこの時期は
さまざまな節目の事柄が多く歴史上でも世間を大きく変えた事件は今どきが多い。
恋の話で昔は本当に好きな人との仲を隠すために別な恋人がいるようなそぶりを
見せることを「敵本主義」と言った。これは「敵は本能寺にあり」の明智光秀
言葉の故事によるものだが1582年6月2日に中国地方の毛利家を攻める途中に
きびすを返して主君、織田信長を攻めた時に家来達にこの言葉で心を打ち明けた。
今年のNHK大河、風林火山は好評らしいが名の知れた武将は次々に主役として
務めたのに明智光秀には出番が無いのは謀反という悪役のイメージがそうさせて
いるのだろうが多くの人を惨殺し強引に天下人になろうとした織田信長のほうが
極悪非道ではないか。教養人でもあり領民にも慕われた明智光秀の謀反の決断を
させたのも梅雨入りの頃の妖しくも欝な気分の季節感がそうさせたのかもしれない。
隠れ光秀ファンとしては信長亡き後は秀吉や家康でなく光秀の時代が欲しかった。
「時は今 雨が下しる さつきかな」光秀の心中はいかばかりだったのだろう。