隠居の独り言(369)

長野県の県歌は「信濃の国」だが、その歌詞は「信濃の国は十州に境連ぬる国にして
聳ゆる山はいや高く、流るる川はいや遠し、松本、伊那、佐久、善光寺、四つの平は
肥沃の地、海こそなけれもの沢に、万足(よろずた)らわぬことぞなき・・2-4省略」
長野県(信濃)の位置や地形の特徴をこれほど的確に言い当てた言葉は少ないだろう。
日本の中央に位置して十州もの国に囲まれ、他国から他国へ移動する場合でも必ずと
言っていいほど信濃は通るか、または無視出来ずに、全体的な俯瞰した目で見ないと
覇を唱える戦国大名は勝ち残る資格は無い。信濃路のもう一つの特徴は当時の水田や
畑の面積が広く生産力は全国でも有数のものであったという。中世室町時代の前半は
平和であった信濃も後半の乱世の時代が近づくと当然に他国からの侵略が始まって
否応なく戦場にされていく。信濃の守護は小笠原氏だが統率力に欠け、小豪族たちが
あい争う状態だったためにやすやすと奪われた。甲斐からは武田晴信市川亀治郎)、
駿河からは今川義元谷原章介)越後からは長尾影虎(Gackt)、上州からは上杉憲政
市川左団次)など一頭の草食動物を襲うハイエナのように猛獣達は信濃を食べた。
NHK大河ドラマ風林火山」は武田晴信が北信濃最強の村上義清(永島敏行)と
戦うことを宣言する。戦況が熟していないと山本勘助内野聖陽)など重臣たちが
進言しても「負け」を知らない若大将晴信は一気に兵を進めようと気がはやる。
次回は千曲川南岸の上田原で激戦となったが地形を知りつくした地元の士気旺盛な
村上勢に大敗北を喫して重臣の板垣(千葉真一)や甘利(竜雷太)をはじめ夥しい
数の軍兵を失い、連戦連勝の晴信もここで大きな挫折を味わうが、人生の長い目で
見ていい勉強であったに違いない。