隠居の独り言(377)

赤ちゃんポスト」が出来て自分の子供を捨てる親が後を絶たないが育てる気が
無いのなら、どうして「産む行為」をするのだろうか。ひとときの快楽にせよ、
経済的な理由にせよ、理由の如何を問わず人間の奥深い母性本能の喪失しかない。
人間は万物の霊長とかで他の生き物よりも優れていると思っているが生き物達は
種を子孫に伝える事の大切な本能で子供を捨てる行為は絶対にあり得ない。
日本にもカバキコバチグモというクモがいる。夏の陽射しも本格的に暑くなる頃
交尾を終えた雌グモは産卵用の巣を作り母グモは100匹程の卵から、かたときも
目を離さず孵化を待っている。孵化して数日が経ち子グモたちが一回目の脱皮が
すむと母グモに一斉に甘えん坊のようにとりすがる。見た目には駄々っ子たちが
おねだりしているようだが実は母グモの体液を吸っている。母グモは抵抗も無く
子グモになすがまま意識は次第に薄れていくのだろうか、半日もすると母グモの
姿は完全に子グモに食い尽くされて消えてしまう。母にとっても、子にとっても
カバキコバチグモの悲しい習わしなのだろうか。そしてお腹を満たした子グモは
お尻から糸を流して上昇気流に乗って旅立っていく。「一寸の虫にも五分の魂」
子のために母は自らを捨てて養うのは生きとし生けるものの絶対的な定めだが
五分の魂も欠けた母親の失格は虫にも劣る。モノが豊かになる事は半面に情愛が
失われておく時代の到来なのだろうか。親にとって最も大事なはずの母性本能が
欠けて自己本位の骨頂がここまで来ると救いようが無い。先に起きた幼児虐待死を
させた親は子供には食事をろくに与えずシツケと称して幼児に虐待を繰り返したが、
飼っていた犬を可愛がって何かがあると動物病院へよく連れていったという。
何という人間性の喪失、鬼が棲んでいるとしか言いようがない。