隠居の独り言(397)

社の決算は6月30日なので8月中に提出の事業年度分の確定申告を昨日済ませた。
今期の決算書もそうだが、ここ数年は毎年のように売り上げは下降線で経常利益も
徐々に減少の一途を辿っている。売り上げが落ちれば利益率の高い商品を扱っても
総合的に事業そのものが小さくなっていく道を歩んでいる事になる。貸借対照表
資産や負債の合計金額も減るのは仕方がないがメーカーとしての本質の技術の変化、
職人の老齢化、輸入品の圧迫、流通経路の流れの構造的な事は好景気の頃の業績の
回復は難しい。同業者の廃業や倒産もここ数年は著しく繊維関係、特に衣料産業の
斜陽は避けられそうもない。安価な輸入品の影響で不況イメージの長期低迷からは
脱出出来た組と出来なかった組と色分けがはっきりして、明暗が分かれる二極化は
企業努力の差にも大いに関係があるが、世の中の流れに先んじるのは仕事に対する
積極的な発想の柔軟性と精神的な若さが必要だが、残念ながら歳を重ねて思考力も
体力も既に落ちてきている。潮時がそろそろ迫っている感がしみじみする昨今だが
振り返ればいい時代に仕事をさせてもらったし、いい思いも沢山味あわせてくれた。
若い頃から休みも無く働いた事も口には言えない苦労の連続も今では、いい思い出、
今の幸せも会社をやっていたからの事で、取り巻いてくれた人々への感謝で一杯だ。
社も一代で終わらせるつもりなので仕事の未練はまるで無いが、いざ辞めるとなると、
得意先、仕入れ先、外注先、従業員等の関連が多く難しい。製帽業に使う専門的な
金型や道具も今では作る機械屋も後を絶って職人の技も消える一方で実に勿体ない。
引き受けてくれる人がいればベターだが経験を要する仕事なのでこれも難しい問題だ。
商売を始めて半世紀が経ち仕舞支度も簡単ではないが資産、営業債権、減価償却等を
処理しキリのいいところで廃業する心算でいる。人は老いるだけでは無い。哀しいが
生きた道の整理をする事が老い先の生活でもあると思う。