隠居の独り言(439)

環境問題が沙汰されているが大きく分けて自然と社会と二つあるものと思う。
戦前、戦中、戦後を生きた私が思うのは、自然の環境が大きく変わったのは
人口が増えそれに伴い住宅が増え農地や林野が少なくなったのは仕方ないが
社会環境までが悪化したのは日本人の倫理観の欠如が大きく原因している。
倫理観とは、例えば先日見たTVで田舎のバスで通学する小中学校の生徒が
停留所で降りる時に、運転手さんに「ありがとう」と声を掛けて降りる姿が
映っていたが挨拶をするその言葉と姿勢に「礼」の根本を見た思いがした。
最近の親殺し、幼児虐待、数々の不正や偽装が伝えられる事件が多すぎて
日本人はどうしてここまで堕ちてしまったのか将来の時代の暗澹を憂えるが
81歳の元ハワイ州知事で戦後の進駐軍兵士の一人だったJ・アリヨシ氏の
日記には『日本に進駐して初めて会った日本人は靴を磨いてくれた7歳の
少年だった。言葉を交わすうち少年が戦争で両親を失い妹と2人で生きて
いかなければならない事を知った。その年は大凶作で1000万人の日本人が
餓死するといわれ少年の空腹は隠しようもなかった。次の日に私は兵舎から
持ち出しを禁じられていたパンをナプキンに包んで少年に渡した。少年は
「ありがとうございます」と包みを箱に入れた。「お腹は空いていないか」
少年は「お腹は空いています。でも3歳のマリコが待っています。一緒に
食べたいのです」このお腹を空かせた7歳の少年が3歳の妹と一片のパンを
分かち合おうとした事に深く感動した』元知事の手紙は、かつての日本人が
持っていた義理、責任、恩、お陰さま、国のために、等々の美徳感はどこへ
いったのかを問うている。外国人に言われるまでもなく最近の多いニュースの
醜悪さは現代に生きる日本人としてとても恥ずかしい。