隠居の独り言(493)

ペリーは何故日本にやってきたのだろうか。当時のアメリカは油を取るために
太平洋で捕鯨が行なわれ食料、水の補給として日本を選んだのは当然としても
別の大きな理由があった。西部開拓を推し進めているアメリカはペリー来日の
10年ほど前にメキシコに難題を押し付けて、米墨戦争(1845)でテキサスを奪い
その領土拡張は、アメリカ的な勝手な解釈で神から与えられた「明白な運命」
マニフェスト・デスティニィ)との考え方で大義は米国にあると日本遠征の
動機となりハワイを治め太平洋を自国の海にすべく拡張戦略の一環でもあった。
「太平の眠りを覚ます蒸気船たった四杯で夜も眠れず」当時を描く江戸狂歌
人々の騒ぐ様を詠ったものだが長い間の鎖国政策の日本が驚いたのは無理もない。
武力で屈服させられる事は、とりわけ誇り高い武士道にとって屈辱的なもので
外国と徹底的に戦うべしとの攘夷論が沸騰したのは自然の成り行きであった。
NHK大河ドラマ篤姫」の舞台はアメリカの艦隊が浦賀に現れたところだが
島津斉彬高橋英樹)は国力や軍備の増強を図ろうとする一方で米国との交渉で
有利に事を運ぶように心砕く。一方の於一(宮崎あおい)は堅苦しいしきたりに
馴染む事が出来ずに苦しみ辛い日々が続くようになるがここが正念場なのだろう。
正助(原田泰造)は3年ぶりに謹慎を解かれ尚五郎(瑛太)や西郷(小澤征悦)は
安心するが共に喜びを分かち合いたい於一が言葉を交わす事も叶わない高い地位に
なってしまったことに寂しさを感じるのは身分制度の厳しい世では致し方ない。