隠居の独り言(531)

ブラウン管TVの調子が悪く、先日に薄型TVシャープAQUOS・20型を
買ってきて自分の部屋の壁際に置いたが今までの重い雰囲気から解放され
コンパクトにスッキリな感じで部屋全体が広くなったみたいな空間がいい。
以前は町の電気屋がTVの持込から設定までしていったが今では量販店から
現物を自分が持ち帰り、説明書を読みながらコードを繋ぐだけでメカに弱い
自分でもなんとかなる。地上デジタルとやらで映る画面は素晴らしく美しく
実際に風景も実物もこんなに綺麗とはとても思えない。風景の色、人物の肌、
物の動き、それにBGMの繊細な音など鮮明な画像と音響は人工的なものが
加味されているのだろうが、それにしても世の中の文明の機器に目を瞠はる。
これからのTVの進化はどこまで進むのだろうか?視覚、聴覚の満足の後に
味覚、臭覚、触覚を感じさせる物まで出来るのだろうか?初めてTVを見た
昔を思えば隔世の感がある。自分が初めて見たTVは上京して暫らく経った
近くの蕎麦屋だった。白井義男のボクシングや力道山のプロレスの格闘技の
試合の日になると蕎麦屋の玄関には「○○対××の試合の放映」などという
貼り紙が貼り出される。しかもその時間はメニューの最も高い天丼しかない。
蕎麦屋にとっては当時でもウン十万円もしたTVの代金を取り返すためには
仕方ない商法なのだが、庶民には物珍しさのTVと試合の魅力には勝てない。
小僧が持っていたナケナシの小遣いを殆ど叩いて月に一度の贅沢を味わった。
はたして蕎麦屋は満員で客たちはいっせいに天井の一角を見ている。当時の
TVは神棚のような高いところに設置され客たちは首の痛くなるのも忘れて
観戦し試合が白熱するといっせいに喚声を上げて気持ちが一つになった。
今に思えばTVの画面は粗悪だったが、むしろその不透明さが現れない分を
想像を高ぶらせて見る人がスリリングを楽しんだのだろう。我が家にTVが
入ったのは昭和30年代後半で「三匹の侍」「ルート66」等が楽しみだった。
♪Get your kicks on Route Sixty six !・キングコールのSPも買ったっけ!
遠い昔の話だが、あの頃の白黒TVのほうが心に残る情感があった気がする。