隠居の独り言(596)

日本人的な美学や美意識は「悲運」があって初めて完結するのではないかと思う。
阪神岡田彰布監督は優勝を逸した責任を感じてリーグ終了とともに辞意を表明した。
今季の阪神は開幕直後から独走し来期の監督も続投の方針が前から決まっていたのに
北京五輪辺りからの後半戦で失速し一時は13ゲームも離していた巨人に逆転優勝を
許したのが耐えられなかったのだろう。後半戦のずるずる負けは阪神の相変わらずの
パターンだが今年はそれがひどすぎた。といって言い訳もしないでさっと身を引く・・
「敗戦の将、兵を語らず」そうだからこそ岡田監督の悲壮感の漂いが胸を打った。
同じ負けでも阪神SDの星野仙一は五輪で金メダルの約束をして果たせなかったが
感動も無かったのは公約と期待が大き過ぎたためかもしれない。徒然草兼好法師
「花は盛りに月はくまなきをのみ見るものかは」と詠ったが、世の中は儚いもので、
だからこそ味があると教えた。敗れた人にも思いやる日本人の美意識の一つだろう。


そのあたりの美意識はアメリカ人に無いのかと思わせるのは先日、北朝鮮に対して
テロ支援国家指定を解除したのは、ブッシュ大統領が2年前に横田早紀江さんと会い
拉致解決の働きかけを約束したのに、忘れたかのような措置は日本人には分からない。
アメリカにとって仲良くするべき国は、日本と北朝鮮の優先順位はどちらなのか?
政権末期とはこういうものなのか?国家意識、そして美意識はどうなっているのか?
国家間には美意識などないし、まして日米同盟などに過剰に頼りすぎるのは危険だ。
アメリカとの付き合い方、近隣諸国との付き合い方を、よく検討する時が来ている。
自分は先の大戦で日本人とアメリカ人の意識の違いを嫌というほど叩き込まれたが
それを象徴する映画で勝者の非人間性と敗者の悲劇を描いたフランキー堺が主演の
私は貝になりたい」の再生版が、11月には中居正広仲間由紀恵笑福亭鶴瓶
上川隆也石坂浩二等そうそうたる役者で上演されるとかだが、ぜひ見てみたい。
「盟約とは蜘蛛の巣だ。カブト虫は難なく破り、蝶は捕らえられる」イスラエルの格言