隠居の独り言(605)

昔、近松門左衛門の「心中天網島」は実際に起きた男と女の心中事件をもとに
筆をとっている。あらすじは「治兵衛は、おさんという女房と子供が二人いる。
一見平和な家庭を壊してしまうのが治兵衛の浮気だが、大阪曽根崎新地の遊女、
小春との恋で分別ある男なら単なる浮気と自制心もきくが治兵衛は生真面目な
商人だけに溺れた恋の淵は深かった。片や小春も遊女の立場を離れて治兵衛に
惚れてしまうほどの純な女性だが金のやりとりが一番で客を選べない遊女では
別れるか、愛を貫くには心中しかない・・」結局は二人が心中して幕になるが
治兵衛が人の道を踏み外したために妻や子供達が犠牲になる悲劇を演じている。
近松の書いた心中物は筋書きの顛末の善悪はともかくとして共通点は男と女が
互いに一途に恋をし、命を賭けてまで全うする純粋さが受けて観客が共感した。


最近に起きた事件で、宝くじで二億円を当てた女性が所帯持ちの中年男に溺れて
金をせびられたあげく殺害されてしまった哀れさは話しにもならないお粗末だが
男にとっては金が目当て、女にとっては盲目になって世の中が見えなくなった。
恋をするなら、そんな安っぽくしてほしくない。女を殺したなら男も自決せよ!
恋は人を成長させる妙薬だが逆に醜くもなる典型的事件だ。現代はケイタイ等で
簡単に相手を拾っている出会い系などは、純粋な恋愛はどこへ行ってしまったか。
「チョーカッコイイジャン」「ギョエー、ダッセー」「フタマタなんてサイテー」
世の中の乙女達よ!みながそうとは思わないが電車の中で聞いたセリフである。
愛の別れで心中は最悪だが、今話題の落語家三平の娘、歌手泰葉と春風亭小朝
一連の騒動は泰葉の独り相撲の様相だったが別れた未練を乗り越える心がほしい。
どんなに文明が発達しても男女の仲は1000年の昔の源氏物語の平安の時代から
少しの進歩もみられない。男と女にとって恋は永遠の課題なのだろう。