隠居の独り言(634)

大河ドラマ天地人」の初回の視聴率は「篤姫」の初回時よりも高いそうだが
圧倒的な人気のドラマの後を引いているのか、それとも物語や役者がいいのか、
それは今後のお楽しみだが、時代背景、男、戦闘場面など前回とは大きく違う。
謙信(阿部寛)は四天王の一で北方世界を守護する憤怒の相の武神・毘沙門天
あつく信仰したばかりか自らを毘沙門天の化身として「毘」の一字を旗に用いた。
あくまで義侠心が強く正義、信義、恩義、仁義、忠義といった「義」を規範とし
行動したばかりか自らを律して不義を極端に嫌い生涯に亘り伴侶を持たなかった。
領土欲は皆無に近かったが義侠のために北条氏に追われた関東管領・上杉憲当を
救うため関東出兵を十数回も繰り返し、武田氏に追われた村上義清を助けるため
川中島で信玄と5回も死闘をしている。策謀や謀反、裏切りが日常茶飯事だった
下克上の乱世にあって“義”を貫き通した稀有な武将は謙信をおいて他に無い。
人生の運は分からない。坂戸城主で謙信の姉・仙桃院高島礼子)が目に留めた
薪炭用人の5歳の息子・与六は、顔相はきりりと引き締まり両眼からは意思の
強そうな光が放たれ動作は機敏、そのうえ利発で礼儀もわきまえていた少年で、
その姿を見て仙桃院は息子の喜平次の小姓として取り上げ、共に学ばせる事で
将来の長尾家を支える柱になるよう望んだことが、後の上杉景勝北村一輝)、
直江兼続妻夫木聡)を産み戦国時代の後半戦を面白いものにした。ドラマは
喜平次・与六が越後の雲洞庵の住職・北高全祝(加藤武)の許での辛い修行で
叱られてばかりの生活は胸に沁みる。時は流れ14歳になった兼続と、家臣の
泉沢久秀(東幹久)が越後と信濃の国境近くの川中島の妻女山で、武田軍団の
様子を探っていた・・天下の情勢が大きく動き始めている。