隠居の独り言(645)

上杉謙信阿部寛)の強さは、その生涯を通じて殆ど負け知らずの戦術家で
戦国一の武将に譬えられるが、その柱には越後特有の豊かな経済力が支えて
戦力の補給には充分なほどの蓄えを持っていた。その繁栄は金山・銀山開発
独占的な布の産物、日本海の港の交易などの上杉家の優れた領国経営だった。
戦争の歴史は優れたリーダーの逸話が多いが、経済力をバックにしなければ
名将をもってしても勝てないのは古今東西において例外は無い。戦国時代の
後半はその謙信すら勝てない大名が現れた。それは織田信長(吉川晃司)で
信長は桶狭間の戦いで十倍もの人数を誇る今川義元軍を奇襲作戦で破ったが
その後は危ない橋を二度と渡らず敵の戦力を見極めそれに勝る自軍の戦力で
戦うのを戦略とした。近畿地方を手に入れると海外との交易で巨万の富を得、
それを基に多数の兵員、大量の鉄砲など揃え国内には実質的に敵は無かった。
20年は掛かるといわれた巨大な安土城も僅か3年で完成させ日本中が驚いた。
謙信がたとえ越後で栄えていても所詮は一地方に過ぎず信長に刃向かっても
1570年代には彼我の軍事・経済力の差は昭和の日本とアメリカの違いに似て
緒戦は勝っても最後の勝敗は決まっているようなものだった。ドラマ天地人
ようやく初陣がかなった兼続(妻夫木聡)も張り切って戦地に赴いたが戦いで
命乞いをする敵の若い兵を切る事ができず落ち込んでしまうが、そんな兼続を
戦に涙は無用と叱咤する上杉景勝北村一輝)に兼続は戦いの厳しさを学ぶ。
越中戦争の最中に直江景綱宍戸錠)が病に倒れ春日山へ戻るが、そんな折に
お船常盤貴子)の婚儀の相手は上野長尾家の景孝(山下真司)と決まる。
七尾城を攻めあぐねていた上杉陣中では景勝と景虎玉山鉄二)の家臣同士の
いさかいが起こっていた。その中で陣中喧嘩の騒ぎを起こし処分を待つ兼続に
初音(長澤まさみ)が現れて信長が戦で勝利すると予言して立ち去っていく。