隠居の独り言(668)

「講釈師、見てきたような嘘をいい」江戸の川柳ではないが、そもそも歴史小説
作家が乏しい史実の資料から年代とか人物や場所をパズルのように組み合わせをし、
それに味付けをして書き下ろすもので、そこは殆どフィクションの世界といえる。
年代の経つにつれ前の作者に脚色や色づけを重ねて中には事実から遠ざかる書物も
あるだろうし、逆にワンパターンの擬似時代劇的なオキマリモノになる場合もある。
同じ時代劇でも黄門や必殺仕掛人などはハナから別物だと視聴者は知っているから
それなりに見ているが大河となると実在の人物が主役となるので製作者の苦労だが
あまりフィクションを多くすると視聴者も冷めてしまうので、その辺り塩梅が難しい。
ドラマの中の、兼続(妻夫木聡)とお船常盤貴子)の忍び合いも考えられないし
安土城織田信長(吉川晃司)と初音(長澤まさみ)の場面もフィクションだが、
ドラマの進行と現代的な志向を考えてもあまりイジルと却って歴史から遠ざかる。
識者という人に限って、あの格好はどうの、セリフが間違っている、風景が違う、と
難癖を付けるが、それはナンセンスそのもので当時そのままなら言葉も通じないし
手振り歩行も今とは全然違うだろう。時代劇は大河であれ娯楽物であれ、現代人が
カツラを被って過去を演ずるもので、細かい事は抜きにしないと見ていられない。
NHK大河ドラマ天地人は、兼続が武田軍との和睦をまとめてきたのに武田家重臣
高坂弾正(大出俊)が急死で話しが中断してしまうが景勝(北村一輝)を説得して
再度兼続は武田軍に和議の使者に立つ。情勢は景虎派(玉山鉄二)の方が優勢だが
上州の上杉領割譲と黄金一万両を武田に与え、代わりに勝頼の妹・菊姫比嘉愛未)を
景勝の妻として迎えることを決めることで、上杉・武田同盟が結ばれることになる。