隠居の独り言(671)

歴史の中の戦国時代というと華々しい合戦の裏側には暗いイメージがつきまとう。
下克上、殺し合い、骨肉の争い、果てない戦乱、貧困、飢餓、農民は逃げまどい、
強盗や人攫いは日常茶飯事、侍は規律でガンジガラメ、歴史研究家はそういった
暗い面ばかりを研鑽し、編集し、あたかも戦国期という16世紀の約100年間は
争いに暮れた時代のように伝えられるが、それらの像は一面的なものにすぎない。
当時の日本は、それまでの室町時代の中央からの律令制の停滞期を脱し、地方が
栄えた開明期であった。それは16世紀中に日本の耕地面積は約2倍になったし、
人口は3倍に増えている。諸工業は急速に発達し、茶、絵画、詩文、建築等々の
日本文化が際立って花開いた時代であったし庶民の識字率も急激に伸びたという。
戦いという厳しい競争の反面に文化・文明が発達する人間社会の不思議を思う。
雪深い越後の人達は忍耐力強く個性のある人が多いのは気候的風土に関係あるが
小さな豪族が乱立し群雄割拠の典型的な地方といえる。侍達にとって土地を守り
部族・家族を束ねるには領主が強ければいいのであって景勝(北村一輝)派でも
景虎玉山鉄二)派でも、どちらでもよかったが両派それぞれの憎悪感は激烈で
黒か白か、二者択一の選択は生死にも繋がるので見極めが難しかっただろう。
NHK大河ドラマ天地人」は武田と手を結んだ事により御館の乱は景勝の優勢と
なったが兼続(妻夫木聡)は仙桃院高島礼子)と華姫(相武紗季)が気にかかる。
景勝は仙桃院と華姫を引き渡すよう景虎玉山鉄二)に書状を出したが拒否される。
そんな折、お船常盤貴子)が使者として御館に出向き仙桃院と対面し戦の責任を
感じているなら上杉の行く末を見届けるべきと進言し結局景虎は降伏し人質として
嫡男の道満丸を差し出すが何者かに道満丸は暗殺され景虎は遂に御館で滅びていく。
景虎と華姫の自害シーンは胸が沁みるが、このドラマとしては「見せ場」なので
もう少し時間を割いて欲しかった。