隠居の独り言(681)

応仁の乱から始まって約一世紀続いた戦国時代もそろそろ最終段階に入っている。
戦国の名武将・上杉謙信武田信玄北条氏康今川義元毛利元就も今は無く
世代交代は進み、その二代目や三代目の器量が問われる難しい時期でもあった。
「生涯不犯」を誓い女性を近づけなかった上杉謙信と違い、武田信玄は子沢山で
多くの妻妾に七男六女を儲け後継者・勝頼以外の男子は他家へ養子に出し女子は
政略結婚の道具として活用した。信玄亡きあとに勝頼が上杉景勝北村一輝)に
菊姫比嘉愛未)を嫁がせたのも政略結婚そのものだったが二人の間に子が無く
生まれれば両家のサラブレッドになるはずだったのに残念ながら恵まれなかった。
肉親の少ない景勝にとって武田が滅びても菊姫を大事に扱ったのも、幼い頃から
寝食を共にした兼続(妻夫木聡)を筆頭家老に取り上げたのも、分かる気がする。
天下の情勢は全国制覇目前の敵無しの織田信長(吉川晃司)に武で刃向かうには、
もはや不可能で、いかに条件良く降伏するかがポイントだったのかもしれない。
NHK大河ドラマ天地人」は越中・魚津城の攻防戦だが、圧倒的な織田軍勢に
包囲されて吉江(山本圭)、安部(葛山信吾)らが必死に防戦していた。兼続は
一旦魚津に援軍に向い、織田軍が越後領内に入ったところで急遽引き返して討つ、
という奇襲作戦を考案して景勝と泉沢(東幹久)のみに話す。でも所詮、大勢は
織田に抗し難く、どこかで決着を付けなくてはならない。籠城組に降伏するよう
兼続は説得を試みるが吉江も安部も上杉の侍として武士道を貫きたいとの拒否は
本能寺の変が迫っているとは神のみぞ知る運命の皮肉だった。