隠居の独り言(683)

大河ドラマ天地人」の今回のテーマは「本能寺の変」だが長い日本史の中で
これほど突発的で衝撃的な大事件はかつて無く、その後の史実を大きく変えた。
四字熟語で表現すれば、驚天動地・油断大敵であり、織田信長(吉川晃司)の
人生そのものと思う。「人間五十年、下天の中をくらぶれば、夢幻のごとくなり・
一度生を受け、滅せぬ者のあるべきか滅せぬ者のあるべきか」敵が光秀と知るや、
死を覚悟し、能の演目の敦盛を舞い、燃え盛る火の中で自ら命を絶った。享年49
彼は1560年に桶狭間の戦いで圧倒的な今川義元軍に攻められ絶体絶命のピンチに
義元の油断を狙い首級を上げたのは誰も予想しなかった驚天動地の事件だったが
それから22年後に立場を変え、当時の義元と同じように一瞬の油断をつかれて
家来の明智光秀鶴見辰吾)に反逆された。信長の発展途中は競争相手に気遣い
和睦を行い、敵を許す寛容性があったが、天下統一が近づくにつけ本性を表し
執拗な性格で恐怖政治を生み、内部粛清では松永久秀荒木村重佐久間信盛
林通勝・安藤範俊などの重臣さえも許さず、比叡山・伊勢長島・越前一向一揆
荒木一族・武田の根切り等、その残虐性は多分にサディスティックな狂気の所業だ。
信長の政策は古い因習を廃し、一世紀に亘る戦国期で疲弊した世の中に活力を与え
大名では珍しい世界観を持ち、経済・外交で国を押し上げた功績は立派なものだが、
光と影の落差が大き過ぎて、光秀でなくてもいつか誰かに謀反されたに違いない。
信長の突然の横死は、また多くの大名の興亡に大きく影響したのは言うまでもない。
中国の毛利・四国の長宗我部・九州の島津・関東の北條・東北の伊達・陸奥の最上
そして景勝(北村一輝)兼続(妻夫木聡)の上杉主従など、安堵したに違いない。
歴史の非情は吉江(山本圭)、安部(葛山信吾)らが必死に守った魚津城の陥落は
6月3日だが、その前日2日に信長は本能寺の火の中で自害していたことだった。
リアルタイムの現代と違って情報伝達の遅い時代では仕方のない運命なのだろう。
ドラマは一時休戦で直江屋敷に戻った兼続をお船常盤貴子)は待ち受けていた。
初めて夫婦らしい時間を過ごす二人は互いに惹かれあっていたのを告白する。