隠居の独り言(684)

ロック歌手・忌野清志郎がガン性リンパ管症で58歳の命を落とした悲しみも
癒えないうちの訃報は「津軽海峡・冬景色」「時の流れに身をまかせ」などの
歌謡名曲を作った三木たかしが下咽頭ガンのため64歳の若さで世を去った。
彼の作品は歌謡ポップスから演歌界まで戦後の歌謡史に多大な貢献を果たす。
石川さゆり、アグネスチャン、西条秀樹、テレサテン、森進一、清水由貴子
あべ静江岩崎宏美山口百恵坂本冬美、そして妹の黛じゅんなど、三木が
いなければ彼らの栄光は無かった。三木に親近感を持つのは中卒で働きながら
黛じゅんとともに小野満船村徹に師事し苦労を舐めたことがかつて自分事に
重ねて胸がつまる。盟友の阿久悠尿道ガンのため世を去ったが、今更ながら
ガンは憎いし、今ほど医学が進歩してもガン撲滅の100%の無いのが歯がゆい。
自分も前立腺ガンの手術をして7年を過ぎたが毎年の血液検査は欠かせない。
明治の思想家・中江兆民も食道ガンで55歳の生涯を終えるが医師から一年半の
余命を告げられ「一年有半」の執筆では「一年半、諸君は短促なりといわん、
余は極めて悠久なりという。もし短(たん)といわんと欲せば十年も短なり、
五十年も短なり、百年も短なり。それ生時限りありて死後限りなし。・・略・・
一年半こそ優に利用するに足らずや、一年半も無なり、五十年百年も無なり」
文体は古いが、あと一年半も生きられるなんてありがたい。なにしろ時間は
永遠なのだから、一年半も五十年百年も同じ相対的なもの、つまり生きる事の
大切さを兆民は語っている。忌野清志郎三木たかしも、生きた年月は短いが
世の中への貢献はハンパじゃない。人生の中身を、あの世で納得しているだろう。