隠居の独り言(745)

NHK大河ドラマ天地人」の物語は歴史的観点からは上杉景勝北村一輝)の
米沢移封によって終わったといっていい。主役の兼続(妻夫木聡)の上杉家への
忠誠心は生涯に変わることがなかったが、歴史にイフがあったなら兼続のような
知略に優った人物が雪深い越後の生まれでなく信長・秀吉・家康のように愛知の
辺りに産の声をあげていたなら日本の歴史が大きく変わっていただろう。上杉は
謙信という英雄を出したが所詮は田舎の路線で甲斐の武田や関東の北條あたりと
戦って生涯を費やした。中央の京都へ出て天下統一するには、その遠い沿道には
数多くの豪族がたむろし、それを掃討するためには地理的に越後は無理だった。
家康の幸運は三河に生まれた故で、尾張から身を立て天下統一目前の信長に従い
その後の秀吉に頭を下げたことで、鳴くまで待ったホトトギスの願いが叶った。
家康は関が原の合戦で勝利の後で江戸に幕府を開き、征夷大将軍となって天下は
完全に徳川体制となったが彼は既に還暦を越え、存命中に幕府を磐石のものに
するためには大阪の秀吉の遺子・秀頼を消さないと、豊臣家恩顧の武将の動向が
気になって仕方ない。老人・家康は豊臣抹殺のために狡知にみちた策謀家だった。
ドラマは兼続の息子・竹松(加藤清史郎)が病気に倒れる。それを伝え聞いた菊姫
比嘉愛未)は、お船常盤貴子)に米沢へ帰るよう勧め、お船菊姫の心遣いに
感謝して米沢へ急ぐ・・一方、江戸では景勝が家康との謁見の直前に菊姫見舞いに
上京する。代わりに兼続が家康に謁見したが、景勝がいないことを責める家康に、
兼続は夫婦がお互いを思いやる心なくして天下を治めることはできない、と返す。
そこに突如、政宗松田龍平)が現れる。陪臣であるべき兼続の将軍・家康への
諌言といい、突然の政宗の訪問といい、信憑性は疑問だが筋書きとして仕方ない。