隠居の独り言(756)

2009年度のNHK大河ドラマ天地人」も幕引きとなったが、いつもの年なら
大河終了が年末の気分だが11月下旬で幕引きとは中途半端な気がしてならない。
ドラマの最初のエピソードに兼続(妻夫木聡)の子供の頃の与六(加藤清史郎)に
母・お藤(田中美佐子)が、越後の厳しい冬に備えて散っていくモミジを見ながら
「わが命よりも大切なものを守るために紅葉になりなさい」と諭すシーンがあった。
モミジの散る頃に物語が終わると示唆していたのか最終回もそのシーンが印象的だ。
原作者・火坂雅志が語ろうとした主役・直江兼続の矜持ある生きた生涯の原点は、
母の言葉に込められていたと思う。それは上杉の“義”であり直江の“愛”だった。
景勝(北村一輝)も兼続も、あの戦国期に自己を貫いた生き方は見事といっていい。
景勝・兼続主従は生涯に3度に亘る存亡の危機が訪れ、その都度乗り切っている。
最初は謙信(阿部寛)亡き後に跡目を争って景虎玉山鉄二)と戦った「御館の乱
2度目は信長(吉川晃司)に圧倒的に攻められたが本能寺の変九死に一生を得る。
最後は関が原の合戦で三成(小栗旬)と手を結んだために上杉断絶の危機を迎える。
その時々の危機を乗り越えた兼続の情勢判断・政治工作は見ごたえがあり視聴者を
釘付けにした。長い年月を越後で暮らした上杉一族が移封のためといえ会津、米沢と
渡り歩いたのは意思に反しただろうし、後に徳川に減俸された苦労は計り知れない。
彼らの16世紀後半は戦国時代が収まりかけた時といえ人が生き残るには懸命だった。
ドラマを通じて感じたが、苦難の時代を生き男達に翻弄させられた女達も印象に残る。
上杉一族を支えた女達、仙桃院高島礼子)華姫(相武紗季菊姫比嘉愛未)など
そして兼続を助けた、お船常盤貴子)初音(長澤まさみ)お涼(木村佳乃)たちの
それぞれが役柄をわきまえ、いい演技をして楽しませてくれた。ここ数年間の大河は
歴史的な英雄より脇役が主人公で、上川隆也仲間由紀恵が演じた「山内一豊・千代」
内野聖陽が演じた「山本勘助」、宮粼あおい堺雅人が演じた「篤姫」などとともに
直江兼続」の日本史では側役の人物を、世に知らしめた大河の業績は大きいと思う。
忙しさの中でTVにあまり興味の無い自分だが、大河ドラマは毎年欠かさず観ている。
自分の独断と偏見で今年の大河を採点させてもらえれば、ここ何年かでは作品、脚本
演出、時代考証、規模、キャスティング、BGM、などなどと70点ぐらいは付けたい。
来週からの司馬遼太郎坂の上の雲」は、著書を読んだだけに大いに期待をしている。
天地人」は越後を中心の田舎芝居のようだったが次回は20世紀初頭の世界全体を
見渡したスケールの大きいもので、どこまで表現出来るのか、見ものだ!!