隠居の独り言(757)

老人の口癖に「むかしは良かった」があるが、人がこの世に存在してから
いつの時代に関係無く、年寄りは呟く。平安の年寄りも、戦国の年寄りも
明治の年寄りも、そして現代の年寄りも・・・それはかつて通った青春や
壮年時代を顧みて、もう還ることの無い日々を愚痴る懐古に他ならない。
若さは戻らないが、人類の歴史は年追う毎に文明の進展があり昔より現在、
現在より未来のほうが良いに決まっている。しかもその発展は加速度的だ。
それでも「むかしは良かった」の一つに以前に比べて、日本人の人情味の
薄くなったのはどうしてだろう。その顕著の際立ちは最近みる凶悪犯罪の
増加で殺人事件や性犯罪のニュースは連日如く日常茶飯事になっている。
イギリス人女性殺人、島根の女性バラバラ事件、鳥取の男性複数不審死、
書き出せばキリがないが、簡単に人を殺める犯罪者の多さと日本人特有の
優しさと信頼感はどこへ消えたのか。自分なりに過去を振り返り考える。
幸か不幸か少年時代は戦争の最中で国家一丸となって国民一同が団結して
戦争に臨んでいたし家族も隣組も国も日本人全体が助け合わねばなければ
生きていけない緊張感がみなぎっていた。それぞれが自分を捨てて国家に
忠節を誓い愛国心の高揚でハングリーな毎日でも心意気は充分にあったし
戦時中の教育は厳しい規律もあったが教育勅語は今も諳んじて忘れない。
聖徳太子の「和を以って貴しと為す」日本人の原点が生きていた時代だった。
戦争も終わり半世紀が過ぎて平和に慣れきった日本人は幸福なボケ状態で
恍惚の太平楽の世の中は緊張感も喪失し自由主義を自己主義に置き換える。
携帯、ゲーム機の氾濫は独りよがりの世界で他人を顧みることを知らない。
千葉の道楽息子も人を殺めてから、初めて自ら額に汗して糧を得ることを
知ったがその代償は大きかった。苦労とは過ぎてみればいい思い出が残る。
大人たちや国にモノ言いたいのは、子供や若い者を甘やかせてはならない。
治安の悪化は教育の基本がなっていないからで、物を言わせてもらえれば
日本も徴兵制、もしくは老人施設の介護など若い人に義務付けてはどうか?
「むかしは良かった」は老人の口癖でなく治安上では「むかしは良かった」