隠居の独り言(782)

黒船が来航し、竜馬(福山雅治)が江戸で剣術修行をしていた頃、中国大陸の清国は
イギリス始め西洋諸国に禿鷹が獲物を蝕むように容赦なく国家も人民も犯されていた。
アヘン戦争やそれに絡むアロー戦争などでイギリスやフランスは清国に対し無条理な
要求を突きつけ九龍半島・香港の割譲や、清国人労働者を劣悪な条件で奴隷のように
拉致して働かせる苦力貿易の諸条約を強引に呑ませ、そして姑息にもそれを仲介した
ロシアは見返りとして日本海に面する沿海州を清国から掠め取って現在に至っている。
当時、大陸に最も近い長州の高杉晋作は藩命で上海へ渡ったが植民地化された清国で
イギリス人達が現地の人を鞭で追って暴虐の限りを尽くしている様を直に見たことは
日本の危機感と攘夷の空しさを肌で感じただろう。いっぽう、土佐では万次郎という
少年の漁師が海で遭難し奇跡的にアメリカの捕鯨船に助けられ船長にも気に入られて
アメリカで貴重な体験を積み帰国する。鎖国が国是の土佐藩では彼を取り調べたのは
河田小龍という人物で、絵師であり儒学蘭学にも長け、万次郎と寝食をともにして
互いに勉強して友情と信頼も生まれる。小龍は鎖国日本の現状と異国の発展の落差に
驚き興奮に胸を熱くしていく・・なかでも最も驚愕したのはアメリカでは一市民でも
努力すれば大統領にもなれるという事だったという。小龍は絵師として才を発揮して
明治の世も生きるが、それはともかく西洋事情や思想など小龍を通して龍馬や多くの
志士に伝わり多大な影響を与えたと云われる。「竜馬伝」のドラマは剣術修行を終え
土佐に戻った竜馬は、弥太郎(香川照之)や半平太(大森南萌)とともに小龍に会い
小龍は西洋文明がいかに進んでいるかと説くと信じられない半平太は攘夷を叫ぶ。