隠居の独り言(784)

先日見たNHKTVでの「世界遺産の旅・スペイン・カナリア諸島」のなかで
街の通りをギターを抱えた十数人の楽隊が歌を歌いながら練り歩く場面には
胸がときめいた。音楽はもとより、雰囲気が明るく華やかで、一人ひとりの
彼らの表情が実に素晴らしい。音楽の骨頂ここにあり、と一人合点をした。
音楽は音を楽しむと書くがこれを地でいく彼らのスタイルに思わず拍手する。
ラテン系の人達は老若男女を問わず歌や踊りが身体に中に染み付いているが
機会あるごとにこんなに美しい歌を皆で唱和できるのはなんて幸せな民族だと
思うこと、しきりだった。TVの映像のカナリア諸島の情景も素晴らしいが
ドラマの中で一人の青年が花束を抱えて恋人に愛の告白に出かけるという。
それを聞いた楽隊が恋人の家の前で「愛の歌」を歌いながら彼のプロポーズの
BGMの演出の手助けは、まるで映画のラブシーンのようで実にうっとりする。
これら演奏しながら道を練り歩くバンドをラ・トゥナ(La Tuna)というが
最初は大学の学生たちが学費を助けるために何人かでバンドを組み民謡などを
弾き語りをしてチップを稼いだのが始めだと聞く。今では一般のラ・トゥナが、
公園、盛り場、居酒屋、バルコニーなどで女性やカップルに近寄って恋の歌を
プレゼントするという。ラテン音楽は男と女の葛藤を描く歌詞や旋律が多いが、
それは人間が持つ本質を素直に表現したもので、身体が自然に動き出すような
リズムやメロディの美しさにすっかり嵌って、下手なりにラテンの弾き語りは
一番の趣味だが、いつか本場に行ってみたいと夢は続いている。