隠居の独り言(785)

「末は博士か、大臣か」今や死語になってしまった若者たちの合言葉は幕末期の
極貧と差別にあえぐ下層に生きる人が、やがて国を牛耳る出世物語が根本にある。
大河ドラマ「竜馬伝」の竜馬(福山雅治)が活躍した幕末から明治にかけての頃、
日本の総人口は約3000万人だった。その人口の中で竜馬はじめ松蔭、高杉、桂、
久坂、西郷、大久保、勝、伊藤、井上・等々数え切れない偉材がキラ星のように
日本に煌めいた。しかも貧乏な暮らしの下級武士達で攘夷を叫び、或いは開国を
求めながら、多くの人材が志果たせず横死するが、それでも彼らの意思を継いだ
先人達が次々に現れて日本の国家像を作る・・なんて素晴らしい時代であったか!
長い日本の歴史の中で燦然と輝いた時代は幕末・明治を置いて他に見当たらない。
今の日本の総人口が1億2000万人、あれから4倍にも増えたというのに、何故
あの頃の優れた逸材が生まれないのか?あきらかに現在の政治を司る人は先人に
比べてあらゆる面で劣っている気がするし、後塵を拝しようとする気概さえ無い!
おしなべて今の世は国のあり方を考えるより私利私欲に走る政治家の多いことよ!
ドラマは、帰省中の土佐で父の葬儀を終え、あいさつ周りに竜馬は出かけるが、
そこで弥太郎(香川照之)の父・弥次郎が、庄屋と水の配分をめぐって争って、
男たちに殴られているのを目撃する。弥太郎は父が怪我をした知らせを受けて
急ぎ、土佐に帰って庄屋や奉行所に抗議に出かけるが、いかんせん地下浪人の
弥太郎の身分では奉行所の判断を変えることは不可能だった。これらのことは
土佐の小さな事件だが、黒船来航を機に全国的に今まで封建社会身分制度
大きな壁に閉塞感を抱いていた下積みの武士達は狂うように新しい時代を求め、
攘夷に或いは佐幕に走り大きな波となって幕末動乱の火花が燃えさかっていく。