隠居の独り言(809)

大河ドラマ「竜馬伝」を観てつくづく思うのは人生行路とは出会いそのもので
誰と出会い誰と別れるのか、その都度、道が分かれていくのを考えさせられる。
竜馬(福山雅治)は青年時代に武芸修行を名目として二度の江戸留学を経験し
おそらく時勢を見る目が出来た発端はここから始まっている。修業した道場は
当代一の剣客・千葉定吉の千葉道場で北辰一刀流の免許皆伝を得て自信を培い
脱藩後も浪人の身でありながら奇跡のように幅広い人脈を築き上げる事になる。
無論、竜馬自身の人柄が大きいが幕府の政治総裁職にあった松平春嶽との対面、
海軍職・勝海舟武田鉄矢)の門人になり横井小楠大久保一翁佐久間象山
桂小五郎谷原章介)等との出会いは日本第一の人物(姉乙女宛書簡より)で
いずれも確固たる理論を持ち、政局に不可欠な人物ばかりとの関わりによって
いっそう深く時勢を知り竜馬独特の新鮮な政治感覚を磨き続けることになる。
浪人の身でありながら、それを可能にしたのは並外れた竜馬の行動力だったが
優れた才覚と強い運勢無くして「竜馬伝」は語れない。かたや竜馬の竹馬の友
武市半平太(大森南萌)は見方によっては竜馬以上の才覚と人望と身分にあり
当時一級の人物と知り合いながら土佐藩に頼る封建主義に拘り、折角の才能を
生かせなかったのは攘夷の現実と世間を見る目の狭さが竜馬との器の差だろう。
ドラマは攘夷実行という抽象的な行為に志士たちは翻弄されていく。とりわけ
土佐藩では藩主・山内容堂佐幕派の首領が配下の攘夷派の志士達への弾圧が
強められる。小さな容疑で加那(広末涼子)の兄・平井収二郎宮迫博之)で
捕えられたのを始め、半平太が結党した土佐勤皇党が壊滅していくのが哀しい。